ブルーマーダー :誉田哲也 ハイテンポなストーリ展開が魅力
東京で発生する連続殺人。ヤクザ、元暴走族のハングレ、裏金業者らが殺され、奇妙にたたまれた死体となって発見される。犯人は誰か、そしてその動機と背景を追って刑事たちが走る。所轄署の刑事姫川玲子と下井が過去を背負いながら、現在を生きていく姿がハイテンポなストーリ展開の中で描かれていく。ブルーマーダーとは「青い殺人」であり、決して殺人者を指すのではないのだが、殺人者が青いマスク(仮面)をつけている噂からこう呼ばれるようになったと刑事たちは知る。酒場で働く東南アジア人の女性が「国へ帰りたい。ブルーマーダーの東京が怖い」と告白する姿は、東京の裏社会でいかにブルーマーダーが恐れられているかに重なり、何とも不気味な雰囲気をかもし出している。
裏社会の人間を次々と殺していくブルーマーダーは、実は下井がかつてスパイとしてヤクザ組織に送り込んだ元刑事であることが明らかになる。彼はその任務途上でスパイであることがばれ、拷問に会い、辛くも生き延びたのだ。誰が自分を売ったのか、それを明らかにすることがこの連続殺人事件の動機だったのである。実はブルーマーダーをヤクザに売ったのは下井の上司であったことを下井の誘導により上司が告白し、それをすでに逮捕されていたブルーマーダーが隣室で聞くことになる。「化けてでもお前を殺しに来る」とその上司にことばを投げ、長年の疑問が明らかになったことに満足を覚えながら、静かに留置所へと去っていく。多くの人間を殺して逮捕された彼は死刑をまぬがれないが、実は彼は末期のガンを病んでおり、死刑になるまでは生きてはいられないのだった。少し心が落ち着く結末である。
一方、ヒロインの姫川玲子は過去にレイプされた暗い経験を持ち、魂に重荷を背負っている。そのため上司の命令に逆らい、スタンドプレイが目立つはみ出し女刑事と思われている。しかしそれは過去の経験の重荷に負ける自分が許せないからこその足掻きなのだ。本小説ではブルーマーダーの弟分が人質をとって立てこもる場面で、彼女の心情が吐露されている。立てこもり犯が銃を構える中、特殊班の到着を待たず、防弾チョッキも着ず、近づいて説得する姿は鬼気迫るものがある。「そう、私はレイプ犯に負けたことがある。だけどもう負けない、あなたに向けたこの銃の引き金を私は引ける。ほかの誰ができなくても、私にはできる。」そんな言葉が頭に響いてくるような場面だ。重く暗いが、強い。
この作家はストーリー・テーラーとして一流だ。ストーリー展開の緻密さはもちろん、人間の内面に深く切り込んだ洞察、人間関係の機微、人生や恋愛に対する理解の深さは群を抜いている。単なる推理小説やアクション小説にとどまらない奥深いこの本は、誰でも楽しむことができる貴重な人生読本でもある。
ありがとう寄稿。
。三島由紀夫といえば日本文学を代表する人物でまじめな文章を書くイメージを勝手にもっていましたが、この本は機知がきいており楽しんで読めました。
感想・書評「不道徳教育講座:三島由紀夫」ネタバレ注意・ウイットに富んだ逆説的な道徳論エッセイ集(レビュー)。 #読書 | 安心の在宅ワーク!稼ぐ人の口コミ・ブログライティング。